MENU

ブログ

ブログ2023.09.21

藤田一也選手が今季限りで引退

facebook

Twitter

LINE

藤田一也選手が今季限りで引退のアイキャッチ画像

本日、藤田一也選手が今季限りで引退する事が発表されました。
【スポニチ】ハマの牛若丸近日中に引退発表
常々、私は当院にお越しのプロスポーツ選手は「品行方正」な方が多いと紹介していますが、その中でも藤田一也選手は格別な礼節や配慮があり、社会人としても大変に評価しているひとりです。
今回はこの藤田選手との特別なエピソードを紹介させて頂きます。

近畿大学野球部の名将、榎本保監督から肝いりの紹介

藤田選手との出会いは、大学3回生の時に当時の近畿大学野球部監督でいらっしゃった榎本保様からの紹介でした。榎本監督からは「ドラフトに掛かる可能性がある有望な選手だが足と膝の故障で難がある」との事で「何とかして欲しい」との相談を受けました。
この榎本監督は、兄貴分の感覚で選手の面倒見がとても良く、過去には後に巨人で活躍した二岡智宏選手など多くの選手を紹介して下さっています。ただ、榎本監督は特に藤田選手に関しては特別な思いがあり「何とかベストで野球ができるように」と心配して何度も連絡を頂きました。

当時は聞きなれない『バイオメカニクス』を受け入れる

私は藤田選手が大学生だった約20年前の当時から変わった施術方針を行っていて、バイオメカニクス理論という、選手個々の体型や関節可動域、筋肉の柔軟性などを考慮した身体に負担が生じにくい生体力学を用いて施術を行っていました。野球であればバットを持ってきてもらい、素振りをして身体に負担がない打ち方をしているか?のチェックを行ってから治療に入るのですが、藤田選手の場合はバッティング時に下肢に負担が掛かっていた事から、徹底的に生体力学理論に基づくフォーム改良を行いました。
先ずは指導者である榎本監督に説明を行い快諾を受けてから指導に入ったのですが、榎本監督からは「一也は一本気で頑固だから…」と、指導した理論をちゃんと受け入れられるか?というのを心配されていたのが印象的でした。

そして藤田選手にフォームのアドバイスを行うのですが、その前に私はこの様にいいました。
「藤田君はプロに行きたいのか?」当然、藤田選手は「ハイ」といいます。
その上で「今のバッティングのアベレージに満足しているか?」と問うと、藤田選手は「満足していませんし、課題は打撃なので向上したい」との回答でした。そして私は「ケガをするということは、身体に無理な負担が掛かっているからで、その負担が無くなれば痛みも無くなり、ムラも無くなりスムーズなフォームになるので試して見るか?」と聞くと、藤田選手は「お願いします!」と返事をくれましたので、通院毎に当院の駐車場で素振りを繰り返す時期があったのです。

通常はドラフトに掛かるレベルの選手が、見ず知らずの知り合って間もない私から今までのバッティングを触られるというのは絶対に不安なはずなのに、彼はそれを許してくれたのです。

後に知った藤田選手の苦悩

因みにこの当時のエピソードについて、今年の初めに当院の山口や亀山努さんに「あの時は通院するのが憂鬱だった」「練習で疲れていても妥協を許さない素振り」「明日が公式戦という日でも容赦なく素振りする」「大学での練習よりもきつく、院に着いた時に『今日は患者さん混んでるから無理や』と言われた日は本気でホッとした」と今まで私には言えなかった20年前の愚痴をこぼしていたそうです。それもそのはず、当時の私は現役のレスラーで身体も大きく迫力もあったみたいなので一言も文句が言えなかったそうで、当時の私の厳しさから「あの時近畿大学から通院していた同期の選手の中で唯一通院が続いたのは自分(藤田選手)だけだった。」とも私に内緒で語っていたそうです。

  (今年の1月 元阪神タイガース亀山選手と)

素直な心の中で決めたら貫き通す頑固さの美学

私はこの時に藤田選手の精神的な素材を感じていました。たいていの選手はなかなか過去の栄光や習慣から抜け出せずに頑固になりがちなのですが、藤田選手の場合は素直に聞き入れ咀嚼して判断してから、やると決めれば頑固に貫き通す性格の持ち主で、皆が脱落する中でも別の視点で指摘を受けたことを改善しようと苦痛な素振りを繰り返していたのだと思います。

契約金か?鳴門金時か?の選択

生体力学的に理想的なスイングとなり、榎本保監督も私の理論に賛同いただき、より実践的な打撃フォームを藤田選手に指導されたことで、苦しんでいた故障も無くなり、打撃成績も向上し始めたところで私はこんな意地悪を彼に言ったのです。
「藤田君、もしドラフトで指名されたら契約金の半分くれるか?それとも藤田君は鳴門市出身だから鳴門金時(さとむすめ)を一箱くれるか?」と言ったところ、彼はいの一番に「鳴門金時をたくさん持ってきます!」と言いましたので、私が「そんなにワシの生体力学理論が安いのなら今日でやめじゃ!」と言ったところ、今度は「いや!先生!契約金の半分を持ってきますよ」と言ってくれたのでした。

  (サイン入りバットを持ってわざわざ挨拶に来てくださった2022年の年末)

大きな箱を寮から3Kmも歩いてもってきた中身は?

その後、藤田選手はなんとリーグ戦で首位打者を獲得され、それを機に当時はその後 藤田選手にアドバイスをすることは無かったのですが、しばらくしてドラフト会議の結果を見てみると「横浜ベイスターズ4位指名」を受けていたのです!しかし、いつまでたっても契約金の半分を私に届けに来なかったのですが、私がそれを忘れかけていた頃に突然 藤田選手が治療院に現れました。ちょうど大学の卒業式前の頃で包装紙につつまれた大きな箱を持って来たため、私は契約金の話はもちろん冗談でしたので「あちゃー!本当にこいつ契約金を持ってきよった?これはマズい」と冷や汗をかいていたところ、藤田選手から「約束していた契約金の半分を持ってきました!」と元気よく差し出されました。そして私は躊躇しながらもその大きな箱を開けてみると、そこにはなんと「鳴門金時の最高品種(秀)」がいっぱいに敷き詰められていて、内心安堵したのを今でも鮮明に覚えています。

このエピソードに関して先日藤田選手が当院にお越しになられた時に「そういえば契約金の半分まだもらってないよな?」と冗談で言うと、藤田選手は「あの時、鳴門金時の下にたくさん契約金敷き詰めてましたよ!あれっ?入ってなかったですか?!」と冗談で返してくるという、お互いに良き思い出となっています。

ここまではたくさんある思い出のエピソードの中のひとつだったのですが…

 (藤田選手も愛用のMAF「体が若返った」と41歳まで活躍できた選手寿命にも良い影響)

プロ野球選手の中でも人間性は太鼓判

藤田選手の活躍と人柄は私以上に同僚の選手やファンの方がよくよくご存じでいらっしゃいますので割愛させて頂きますが、私が藤田選手を評価している点としては、阪神タイガースの亀山努選手もそうだったのですが、当院にお越しになっている野球少年に優しく声をかけ気さくに記念撮影やサインに応じて下さったり、有名選手にありがちな横柄さや慢心がどんな時であっても微塵もないところです。本当に彼の人柄は素晴らしいです。
また、先述いたしました様に「素直に聞き入れ、やると決めれば頑固に貫き通す」という選手としての心得も素晴らしく、また後輩の選手への面倒見がとても良く、たくさんの人から慕われています。心技体として後輩の模範となる選手ですので、球団としては早く指導者にしたい思惑もあっての今回の引退だったと思います。
※私は藤田選手の人間性に興味津々となり、親御さんはどの様な方なのだろうかと榎本監督にお尋ねしたことがあったのですが、やはりご両親とも相当に律儀で誠実なお人柄と聞いてとても納得しました。

  (今年2月藤田選手の自主トレにプロスケートボーダー山本勇選手も参加)

彼の人生経験は私を震い立たせてくれている

あと、藤田選手は本当に努力家ですが、でもそれは並大抵ではありません。
もちろん野球選手は試合で結果を出すことで評価をされると思うのですが、私の場合は社会性や人間性も含め藤田選手を「真のエリート」だと断言できます。
私もこれまで多くの方の人生劇場に接してきていますが、私の知る限りで「泣き言を言わずに」「寡黙に現実と向き合い」「試練を乗り越え」「逆境に打ち勝ち」「尊敬できる」アスリートと言えば藤田選手の他ありません。彼が抱えた苦難は並大抵ではなく、私もいくつもの修羅場を括ってきた自負はありますが、もし彼と同じ試練を与えられたら恐らく私でも潰れていただろうと思うくらい、彼には孤独で現実と戦っていた時期があったのです。
並々ならぬ努力によって苦難を脱した彼の姿を見てきていますので、私も自身に苦難が訪れた時は藤田選手のことを思い出し励みにさせてもらっています。学生時代から20年の月日が経ちましたが、今になれば藤田一也選手の「寡黙に戦う姿」を見て私が勉強させられています。

今後は相当に良き指導者になること間違いないのですが、野球の指導者であると共に世のお役目としてこれから活躍する人材を育成していってくれるものと確信をしています。

最後に

これまで30年間にわたり何人ものプロ野球選手を診させて頂いてきましたが、これで私と現役のプロ野球選手との関りも終止符となります。そして最後の選手が藤田一也選手であったことが何よりでした。

 (横浜へ移籍になった際に送ってきてくれた楽天時代の貴重なユニフォームやヘルメット)

藤田一也君!本当に私にも勇気を与えてくれてありがとう!
そして41歳まで現役本当にお疲れさまでした!

【過去の藤田選手に関するブログ】
2021/5/5「藤田選手から届いたバット」
2021/12/9「藤田一也選手がDeNAベースターズに入団が決定!!」
2021/12/28「年内締めくくりの日に突然の嬉しいプレゼントが…」
2022/01/18「極寒の中での藤田一也選手の自主トレ」
2022/01/31「プロ野球 藤田一也内野手&あるタカラジェンヌはスーパー人格者!!」
2022/12/20「プロ野球 藤田一也選手 律儀な年末の挨拶」
2022/12/27「12月26日に藤田一也選手と京阪クリニックに訪問」
2022/12/30「ガン治療の専門院である京阪クリニックにどうしてスポーツ選手が…?」
2023/01/20「プロ野球選手が語るケガの回復のための知識」
2023/01/22「プロ野球選手とOB!患者同士の交流で話の花が咲く」
2023/01/23「プロボーダー山本勇選手がプロ野球藤田一也選手の自主トレに参加」
2023/01/24「超ベテラン域のプロ野球選手の肉体的再生とは」
2023/01/27「プロ野球 藤田選手とプロボーダー山本選手のオフショット」
2023/02/01「持久力向上の鍵はナノバブルオゾン?ブライテストウォーターに寄せる期待度とは?」

この記事をシェアする

facebook

Twitter

LINE

カテゴリー
アーカイブ

タグ