謹賀新年
高校生が交通事故で重度の歩行障害に…
私は昨年末(厳密には手違いがあり元旦)に正風病院のセカンドオピニオンの有効性について説明させて頂きました。そこで高校生のレスリング選手の「奇跡の回復劇」を紹介させて頂きましたが、その件について詳細に説明させて頂きます。
滋賀県日野高校レスリング部監督 南先生 (現:滋賀県レスリング協会 副会長)
南先生は私が高校時代に所属していたレスリング部とはライバル校の監督という間柄でしたが、なぜか私の出身高校の監督とは卒業以来 疎遠なのですが、南先生とは30年以上の付き合いになります。
南先生はいつも日野高校のレスリング部に限らず、他のクラブの生徒までもケガをした子がいると滋賀県の鈴鹿山脈の麓の町から奈良県まで連れて来て下さるとても生徒思いの熱心な先生です。
そしてある日、その南先生が連れてきたのは自高の選手ではない同じ滋賀県のライバル高校のレスリング部の選手でした。ライバル校であっても「困っている子を放っておけない」と、正に「敵に塩を送る」が如くの寛大な行為でした。
歩行がままならない深刻な症状
この選手が当院に来られた時の症状は、通常の歩行中に突然、片脚に強い脱力感が襲い、片脚だけが1歩1歩体重がかかるたびに いわゆる「膝カックン」になり、正常な歩行が出来ない状態となっておりました。この症状は受傷後しばらくして出てきたそうで、もちろん受傷時には救急車で病院へ搬送されて整形外科医の診察を受け、また滋賀の地元の整骨院には1年近くも2日に1度のペースで受診し積極的な治療を受けていたそうですが、レスリングどころか日常生活においても深刻な問題が生じていたため、見かねた南先生が当院へ連れて来られたのです。
(南先生)
「交通事故専門」と掲げている整骨院の問題点
話しは少し脱線しますが、この選手は整骨院の先生の「絶対に治してあげるから」との言葉を信じて通院されていました。しかし、私たちからすると交通事故の患者であっても、治療後の回復期間を考えると週に1度の通院が理想的で、どれだけ多くとも週に2回までが適切だと考えていますが(受傷後すぐの初期段階を除き)、「毎日」や「週に3回以上」の通院で回復が早くなるなど私たちでは考えられません。
最近の整骨院では健康保険の審査が厳しくなってきており、かといって本格的な自費診療を行うほどの技術(実力)も無い事から、自賠責保険(自動車保険)で収益を上げようとしている整骨院が年々増加しています。実際に業界のセミナーでも、患者さんへは「通院する毎に“慰謝料”がカウントされる」旨を伝え、また整骨院も患者さんが健康保険で通院されているよりも自動車保険の方が倍以上の収益となり、それに健康保険よりも遥かに審査が緩い事が「交通事故専門」と掲げる整骨院が爆増する理由です。
因みに安易に交通事故で整骨院に通院してしまうと、この国が誇る「自賠責保険制度」をひっ迫させる事となり、自賠責保険や自動車任意保険の掛け金の増額につながることから、最終的には私たちに負担が掛かってしまう事となってしまいますので要注意です。
滋賀県の総合病院の診断は「詐病」?
話しは先ほどに戻りますが、今回の患者さんは決して“慰謝料目的”なのではなく純粋に「早く治したい」との思いから滋賀の整骨院に通院されていたのですが、いわゆる「交通事故専門」と掲げているような整骨院ですので結果が出るはずもありません。そして患者さんが切実に「結果が出ない」ことを訴えると、そこで初めて総合病院の整形外科を紹介する始末だったそうです。ただ、その総合病院にて整形外科分野や脳神経外科分野での検査を繰り返しても原因不明で、挙句の果てには「詐病」を示唆される始末となり、患者さんもご家族も途方に暮れていたそうです。
当院では打撲による神経障害だと考えるもなかなか証明されず
受傷してから1年近く何の改善も無くこの様に深刻な状態が続いた後に当院へ受診されたのですが、当初、私たちが判断したのはヒザ(大腿部)の打撲による神経障害でした。その観点から先ずは神経内科医を紹介して精密検査を行うも、特に異常なし。そして、その直後にヒザの専門医である正風病院の堀部副院長を紹介して膝関節の精密検査を行うも、その時も特に異常が見つかりませんでした。
症状的に完全に迷宮入りと思われましたが…
各専門医に委ねた結果も原因が特定されることが無く、患者さんも私たちも途方に暮れていました。しかし、もう一度、入念に症状の検証を行ったところ大腿部を圧迫すると症状が無くなる事を突き止めたのです。
ここから各分野のエキスパートの医師たちが力を発揮して下さいました。
つづきはまた明日のブログで。